第74回 楊佳嘉さんインタビュー『Women in Asia under the Japanese Empire』

Routledge 2023年



今回は2023年にRoutledgeより出版された『Women in Asia under the Japanese Empire』の共編者である楊佳嘉さんにお話を伺いました。インタビュアーは同じくこの本の共編者、蔭木達也さんです。

【著作概要】アジア各地の女性の立場から日本の帝国主義を描く本書は、沖縄、台湾、朝鮮、満州はもちろん、汪兆銘政権下の広州から南洋までをも取り上げ、各地の女性たち(日本人も含む)がどのように帝国日本の植民地主義と向き合い、その影響を受け、あるいはそれと対抗したか、ということを論じています。
雑誌などのメディアを通じたプロパガンダ、旅行者や移民の目線、帝国・民族・ジェンダーの複合的にねじれた関係、画一的に喧伝される帝国の女性像と各地で芽生える独自のアイデンティティ、抑圧・抵抗・協調の諸相——読者は11章の充実した研究を辿っていくことで、「良妻賢母」が東アジア各地で形を変えながら展開していること、当時の一部の女性知識人たちには日本より中国の諸都市が「近代」的に見えていたことなどはもとより、理想とされる「帝国の日本人」イメージすら各地で大幅に異なり、外地日本人から内地が批判されていたりすることや、沖縄女性が置かれた特異かつ悲惨な歴史的位置など、興味深い論点に次々と行き当たることでしょう。


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【ゲスト:楊佳嘉 プロフィール】

1990年中国山西省生まれ。専門は日本近現代文学、日中比較文学、女性文学 ·文化。名古屋大学文学博士。日本学術振興会特別研究員(DC2)、名古屋大学博士候補研究員を経て、現在は中国厦門大学外文学院助理教授。主な論文に「『輝ク』における日中女性の連帯とその変節 〜インターナショナル ·フェミニズムから帝国のフェミニズムへ」(『日本語·日本学研究』vol.14、2024.3)、「⁠平林たい子と彼女の「満洲」体験物語 〜作品における空間の意味と機能をめぐって⁠」(『北東アジア研究 』vol.32、2021.3)など。ジェンダー、戦争、植民地の問題に関心があり、特に近代日本女性文学、女性雑誌における中国表象の問題を中心に研究しています。近年は女性作家、女性文化人と戦争の関係から、日本帝国のフェミニズムの多様な系譜という問題を考えている。


【インタビュアー:蔭木達也 プロフィール】

非正規教員。高群逸枝を軸に、1920年代から30年代の日本に着目した社会思想史研究を行っている。論文に、「「分裂せざる」二者から始まるアナーキズム」(『社会文学』51号、2020年3月)、「「神」と対峙する「天皇」のイロニー」(『思想』1158号、2020年10月)、「高群逸枝の民衆哲学」(『国語と国文学』99巻第1号、2022年1月)、「社会運動のなかの報徳思想」(『報徳思想とその展開』不二出版、2023年)など。