第64回 小磯隆広さんインタビュー『日本海軍と東アジア国際政治〜中国をめぐる対英米政策と戦略』

錦正社 2020年



今回は2020年に錦正社より出版された『日本海軍と東アジア国際政治〜中国をめぐる対英米政策と戦略』の著者である小磯隆広さんにお話を伺いました。インタビュアーは中立悠紀さんです。

【著作概要】
本書は、昭和戦前期、日本陸軍と双璧をなす軍事組織であった日本海軍の満洲事変から日米開戦に至るまでの期間における、対英米観、対英米政策、そして戦略(作戦方針と用兵思想)を分析したものである。

1930年代政治外交史、国際政治史研究は非常に膨大な蓄積がされてきた。そのような研究領域において、本書は重要な歴史像を提示する成果である。

本書はタイトルの通り、東アジアの国際政治における日本海軍の位置を考察したものであり、従来、陸軍や外務省と比較して断片的な分析にとどまっていた海軍の対英米観とその政策・戦略を博捜した史資料を使って丹念に分析している。アメリカが提示した門戸開放・機会均等の理念に海軍がどのように対応・利用しようとしたのかといった問題や、また海南島問題と日米交渉の関係を取り上げることで、対米戦にいたるまでの海軍の戦略の重要性を浮き彫りにしている。

本書は、近年は必ずしも若手研究者人口が多いとは言えない1930年代政治外交史研究において、後進が読むべき本の一つである。


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【ゲスト:小磯隆広 プロフィール】

1985年千葉県生まれ。2018年3月、明治大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(史学)。外務省外交史料館非常勤職員、明治大学文学部兼任講師を経て、2020年4月より防衛大学校人文社会科学群講師。 主要著作に『海洋政策研究所史料集成〜南方進出・国家総力戦関係』全4巻(監修・解題、ゆまに書房、2022年)、『陸軍大将奈良武次日記〜第一次世界大戦と日本陸軍』上下(共編、原書房、2020・21年)など。


【インタビュアー:中立悠紀 プロフィール】

1990年京都府生まれ。2018年3月、九州大学大学院地球社会統合科学府博士後期課程修了。博士(学術)。大韓民国・朝鮮大学校外国語大学助教授を経て、2022年4月より日本学術振興会特別研究員(PD)。
現在、『東京裁判・BC級戦犯裁判と帝国陸海軍軍人〜裁判対策、戦犯釈放運動、靖国戦犯合祀、歴史修正主義』と題した学術書の刊行を目指している。またアジア・太平洋戦争期の陸軍の対外政策について研究しており、1938年の東亜新秩序声明と汪兆銘工作が、陸軍内にあった対中政策の相違を収斂させるために打ち出された理念・和平かつ謀略工作だったという事実を明らかにしようとしている。