今回は2022年に岩波書店より出版された『東京裁判研究〜何が裁かれ、何が遺されたのか』の著者である宇田川幸大さんにお話を伺いました。インタビュアーは中立悠紀さんです。
【著作概要】本書は、日本敗戦後1946年5月から1948年11月まで、日本の戦争指導者層・いわゆるA級戦犯を裁くために実施された国際裁判・極東国際軍事裁判(東京裁判)に対する歴史学的研究である。
従来、東京裁判に関する研究は、裁判の前史や、水面下における戦争犯罪の免責過程、裁判をとりまいた国際関係について重厚な研究蓄積がされてきた。しかしながら、東京裁判の審理過程自体に関する検討は、大きく遅れている状況にあった。
本書は、東京裁判を審理として捉え、裁判記録などを用いて審理の実態について論証したものである。その分析対象は広く、アジア・太平洋戦争で日本の指導的な地位にあった人物・統治機関(陸軍・海軍、外務省、大蔵省、内大臣)に対する審理実態を網羅している。
また、A級戦犯の戦犯裁判観・戦争観、戦後観について分析し、さらに新聞や国会議事録を用いて戦後日本社会における東京裁判観を分析した。
東京裁判の審理の諸相を明らかにし、同時に戦後の日本人がどのように裁判を捉えてきたのかに迫った本書は、戦犯裁判研究や、歴史認識研究、1930・40年代の政治外交史研究を行う者にとって、読むべき本の一つである。
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【ゲスト:宇田川幸大 プロフィール】
1985年、神奈川県生まれ。2015年 一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学・一橋大学)。一橋大学大学院社会学研究科特任講師を経て、現在、中央大学商学部准教授。専門は歴史学、日本現代史。主要著作に『考証東京裁判〜戦争と戦後を読み解く』(吉川弘文館 2018年)、『東京裁判〜捕虜関係資料』(全3巻、共編、現代史料出版 2012年)、『東京裁判〜性暴力関係資料』(共編、現代史料出版 2011年)、主論文に「オランダ裁判と被告人」(『商学論纂』60巻 2019年)など。
【インタビュアー:中立悠紀 プロフィール】
1990年、京都府生まれ。2018年 九州大学大学院地球社会統合科学府博士後期課程修了。博士(学術・九州大学)。大韓民国・朝鮮大学校外国語大学助教授を経て、現在、日本学術振興会特別研究員(PD)。専門は歴史学、日本現代史。主論文に「愛の運動戦犯受刑者助命減刑内還嘆願署名運動〜戦犯釈放運動の実態についての一考察」(『同時代史研究』第8巻 2015年)、「旧帝国陸海軍軍人と靖国戦犯合祀の関係〜BC級戦犯合祀の経緯」(『史学雑誌』第128編7号 2019年)、「占領体制と戦争責任論の形成 (特集 占領とは何か : 日本戦後史の出発点を問う)」(『歴史評論』868号 2022年)など。