今回は2020年に解放出版社より『被差別部落女性の主体性形成に関する研究』を出版されました熊本理抄さんをゲストにお迎えしました。インタビュアーは鶴見太郎さんです。
【本書概要】
本書は三部から構成される。第一は、部落女性90人の聞き取り分析だ。部落民であること、女性であることを部落女性がいかに認識し位置づけているか、その認識になにがどのように影響しているか、その位置づけをどう変容しようとしているかを明らかにする。第二は、部落解放運動の資料分析である。部落解放運動が部落女性の主体性形成をいかに支援あるいは阻害したのか、そのなかでみずからの主体性形成を追究しつづける部落女性の思考と実践はいかなるものだったのかを考察する。第三は、ブラック・フェミニズム思想と国際人権言説が提起するインターセクショナリティ概念と部落女性が解放運動で定着させた複合差別概念の共通性と相違性を見出し、それら概念の理論的、実践的有効性を検証する。
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【ゲスト:熊本理抄 プロフィール】
1972年福岡県生まれ。近畿大学人権問題研究所教員。博士(人間科学)。 幼少期を被差別部落で過ごし、部落解放運動に参加する。留学先で先住民族や性的マイノリティの人権運動に出会ったことをきっかけに、大学卒業後、反差別国際運動(IMADR)で働く。反差別国際運動は、世界中で差別と闘っている人たちとつながりたいという思いから、1988年に部落解放運動など国内外のマイノリティ当事者団体がつくった国際人権NGO。 2002年4月から現職。現在は、被差別部落女性の解放運動およびインドやネパールのダリット女性による解放運動、世系に基づく差別とジェンダーの複合差別、レイシズム・スタディーズとダリット・スタディーズの連携、教育と福祉のまちづくりを研究テーマとしている。
【インタビュアー:鶴見太郎 プロフィール】
1982年岐阜県神岡町(現飛騨市)生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻准教授・博士(学術) 専門は、歴史社会学、ロシア・ユダヤ人、イスラエル/パレスチナ、エスニシティ・ナショナリズム。主な著書:『ロシア・シオニズムの想像力:ユダヤ人・帝国・パレスチナ』(東京大学出版会、2012年)、『イスラエルの起源:ロシア・ユダヤ人がつくった国』(講談社、2020年)、From Europe’s East to the Middle East: Israel’s Russian and Polish Lineages(共編著、ペンシルベニア大学出版局、2021年)